モトックスが提案する、ワインのあるライフスタイル「もっと!ワイン」

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父と、家族を語らうワイン ドヴィーディオ(D’Ovidio)

父と、家族を語らうワイン ドヴィーディオ(D’Ovidio)

 

そのワインは、厳格でしっかりとした存在感がありつつも、口当たりは角がなくて驚くほど丸みを帯びている。
まるで自然の中にいるような、穏やかで豊かな気持ちになるワインだ。

 

穏やかで豊かな気持ちになるワイン

 

イタリア・トスカーナ州の南東部にあるワイナリー「San Luciano(サン・ルチアーノ)」が造る、「D’Ovidio(ドヴィーディオ)」。

何と、10年という熟成を経て販売されているこの赤ワインが、このワイナリーのトップワインだ。

 

「San Luciano(サン・ルチアーノ)」が造る、「D’Ovidio(ドヴィーディオ)」
(San Lucianoのワイン)

 

著名なワインを数多く産出するトスカーナ州であるが、San Lucianoがあるこのエリアは、ブドウ畑よりもむしろ小麦畑が大きく広がっている。
日本でいえば「田園風景」に当たるのだろうか、この広々としたのどかな風景の中を進むと、やがてブドウ畑と建物が見えてくる。
San Lucianoのブドウ畑とワイナリー、そして自宅だ。

 

San Lucianoのブドウ畑とワイナリー
(San Lucianoのワイナリーとブドウ畑。醸造所の横に自宅がある)

 

San Lucianoは、Ziantoni(ツィアントーニ)家族が経営するワイナリーだ。

2021年6月、San Lucianoより日本へ、突然の訃報がとどいた。
オーナーであるOvidio(オヴィーディオ)さんが亡くなったのだ。
あの笑顔をもう2度と見られなくなると考えたら、胸が締め付けられる思いがした。

ワイナリーのオーナー、経営者ではあるが、私には「大家族の偉大な父」としての印象が強い。
仕事柄、ワイナリーには何度か訪問したことがあるが、必ず笑顔で迎えてくれた。

ワイナリーのことは2人の息子が受け継いでいるので、そちらと仕事の話をするが、それが終われば、食事を一緒にといって誘ってくれる。

Ovidioさんを筆頭に、家族総出でご飯の準備をし、Ziantoni一家、三世代と一緒に食事をするのだ。
初めての時は、その距離感に戸惑ったものだが、おいしい食事と、笑顔の絶えない家族の皆さんの会話に、えも言われない心地よさを感じたものだ。

 

息子のMarcoさんと一緒に、メインのキアナ牛を用意するOvidioさん。
(息子のMarcoさんと一緒に、メインのキアナ牛を用意するOvidioさん。)

(Ovidioさん自らが取り分けてくれた。)。
(Ovidioさん自らが取り分けてくれた。)

 

なぜこんな空間が生まれるのか、不思議に思った。

San Lucianoは、自分たちで全てのブドウを育て、ワイン造りを行っている、「農家」兼「醸造所」だが、先祖代々受け継がれてきた、というわけではない。
実はOvidioさんが一代で築き上げたものだ。

Ovidioさんは、首都ローマがあるラツィオ州で生まれ育った。
父親がワイン造りをしており、それを手伝っていたが、自分自身で一からワインを造りたいと思い、土地を探すようになった。
トスカーナ州にも訪れ、キアンティなどの有名地も廻ったが、1972年、ブドウ栽培が殆どされていなかったこの地を選んだ。
決め手となったのは、この地に生えていた植物だったらしい。

場所を決めたのは良いが、何のゆかりもないところであり、ゼロから開拓をしなくてはならない。
家族を養いながら、自分でブドウを植えつけ、ワインを造り、販売をした。そして自分たちでできることを徐々に増やしていった。

実はZiantoni家 の凄いところに、「可能な限り、自然なものを手作り」で行っていることがある。
ブドウ栽培では、農薬は自然のものを使い、極力使わないような作りをしていることは知っていたが、ある時、ワイナリーの屋根にソーラーパネルがびっしり貼られたことがあった。
聞くと、醸造にかかるエネルギーを自家発電しているとのこと。

 

可能な限り、自然なものを手作り
(醸造所の屋根にあるソーラーパネル)

 

これだけではなく、食べるものも全て自分たちで手掛けるようにしている。
小麦や野菜なども、自分たちで作ったものだ。
家畜も育てている。
鶏を育てて卵を産ませ、牛や豚なども飼っている。
そこからは、日々食べるお肉、生ハムなども自分たちで作るのだ。
驚くのは「家畜の餌も、自分たちで育てた飼料」だそうだ。
そこには「自分たち家族が安心して食べられるものを」という想いがある。

 

(飼っている鶏。この卵で作った、ストラッチャテッラという卵のスープは他では食べられない。)
(飼っている鶏。この卵で作った、ストラッチャテッラという卵のスープは他では食べられない。)

(加工肉も自家製で。))
(加工肉も自家製で。)

 

今では「パン以外の口にするものは、全て自分たちで作ったもの」になっている。
Ziantoni家にとって、San Lucianoというワイナリーは「仕事」というより、「家族・生活の一部」でもあるのだろう。

その事実を知る人たちからはSan Lucianoワインへのニーズが絶えない。
地元の人々は、家族で飲むワインや、飲食店でのハウスワインとして、容器をもって毎日のようにワイナリー訪れる。
実は他のワイナリーから販売を求められることもある。日本でいう桶買いだ。
「自分の子供が将来ワインを飲めるようになったら、絶対San Lucianoを飲ませたい」という人もいる。

 

(直売所に買いに来られた地元のお客様)
(直売所に買いに来られた地元のお客様)

 

今のSan Lucianの様に、これだけのものを自分たちで全て作ることができるようになり、人々からここまでの信頼を得られるようになるには、並大抵なことではなかっただろう。
Ovidioさんは、多くは語らなかったが、これまで大変な苦労があったのではないか。

全く土地勘のない場所にきて、しかもすでに実績のあるところでもなく、たった1人でその決断をした先見性に恐れ入るが、いつもお会いした時に見かけた「笑顔」の陰に、握手した時に触れた「あの手」が忘れられない。
大きくて分厚くて。
ごつごつしたその手に触れれば、言葉で語ることができない、Ovidioさんのこれまでの人生を感じられた。

 

Ovidio

 

生きていく上で、本当に大切なことを大切にする人だった。
約束は必ず守る。握手をするというのは、契約に等しい行為だった。
彼の手は、その人柄をすべて表した手だったんだ。

今になって思う。
ああ、San Lucianoというワイナリーが造るワインだけでなく、Ziantoniという家族から感じる優しさや温もりまで、Ovidioさんが一代で築いたんだ。

 

(Ziantoni家)
(Ziantoni家)

 

もうお気づきだろうが、D’OvidioはOvidioさんの名前を冠したワインだ。
ブドウ栽培を手掛ける兄Marcoさんと、醸造を手掛ける弟Stefanoさんの2人の兄弟が、父親にささげたワイン。

 

(Stefanoさん(中央)がD’Ovidioを準備する。右がOvidioさん。)
(Stefanoさん(中央)がD’Ovidioを準備する。右がOvidioさん。)

 

このD’Ovidioにはモンテプルチアーノ種が多く含まれている。
トスカーナのワインでこの品種を使ったワインは珍しいが、これには訳がある。
Ovidioさんが生まれ育ったローマ近郊では、地方から集まってきた出稼ぎの人たちが多く住んでいた。地元の特産であるブドウ品種を出稼ぎ先で育てていた人もおり、モンテプルチアーノ種もその1つ。
Ovidioさんにとっては、小さなころから人生の中で馴染みがあった品種だったからだそうだ。

ラベルにはSan Lucianoが所有するブドウ畑の地図を描いた。
ゼロから作り出した父Ovidioさんへの敬意を込めたこと、このワインの特徴が、骨格がしっかりしているが優しさも兼ね備えたところが、父親に似ていることから、2人の息子が名付けた。

 

(San LucianoのトップワインであるD’Ovidio)
(San LucianoのトップワインであるD’Ovidio)

 

ワイナリーだけでなく、素敵な家族を築いたOvidioさん。
父として、家族の柱として大きな存在だった。

今、父親になった自分がこのワインを飲んでいるが、次は自分の父と一緒にこのワインを飲んでみよう。
父の人生を聞きながら、幸せな家族との思い出話をしながら。

 

 

 

ご紹介したワイン「ドヴィーディオ」はこちら


 

詳細はこちら

 

「アジィエンダ・アグリコーラ・サン・ルチアーノ」のワイナリー情報はこちら。

アジィエンダ・アグリコーラ・サン・ルチアーノ

ワイナリー紹介「アジィエンダ・アグリコーラ・サン・ルチアーノ」

地元の人のみならず、他社ワイナリーからも購入希望が殺到するほどのワイン。

 

Profile: 音無 能紀(おとなし よしのり)

食べること、自然と触れることを通じて、自分が周囲や未来に素晴らしい世界を作ることを目指している。ホワイトスペース、きれいな水のあるところ、挽肉、日本茶、小豆があると引き寄せられる。高いところと首、猫が苦手。

 

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