1. Home
  2. Producer
  3. Winery
  4. Borovitza Winery
ブルガリア
ブルガリア ドナウ・プレーン

ボロヴィッツァ

Borovitza Winery

「すべては自然が創るもの」ブルガリア北西部のテロワールを写し取る、柔らかくピュアなワイン

経験豊かな二人の醸造家が惚れ込んだ土地

ボロヴィッツァは、故オグニャン・ツヴェタノフ氏とアドリアナ・スレブリノヴァ氏という二人の経験豊かな醸造家により、2005年に設立されました。二人の共同ワインプロジェクトは1999年にボルドーで開催されたワイン展示会「ヴィネクスポ」で、オーストラリアワイン“E.&E.ブラックペッパー・シラーズ”の虜になったことから始まります。このとき既に、自分たちの手でワインを造りたいという想いを持っていた二人は、この経験をきっかけに、その想いを実現させる第一歩を踏み出すことになったのです。

 

プロジェクト始動当初、二人は国内各地のワイナリーで、選び抜いた畑のブドウを集めてワインを生産していました。しかし徐々に、真のテロワールワインを造るためには特定の地域に身を定めるべきだと考えるようになりました。ワイン醸造学の博士号を持つオグニャンが、ブルガリア北西部、セルビアとの国境に近く、バルカン山脈の麓に位置するボロヴィッツァ村の、1960年代に設立されて空き家となっていた小さなワイナリーを2004年に取得したことが、ボロヴィッツァの始まりです。

 

ワイナリー設立当初は、オグニャンひとりでブドウを栽培していました。ブルガリア北西部の素晴らしいポテンシャルを見せようと、アドリアナを呼び寄せますが、ワインの世界で25年以上のキャリアを持つ彼女は、最初はこの地で働くことを断りました。しかし、地元のオーク材の樽で熟成させたワインのサンプルを試飲したとき、その想いは一変しました。「最初は罠かと思いました。北イタリアやフランス、スペイン等のワインだと思ったのです」と振り返ります。アドリアナはその後、ブドウ畑とブドウを見て、その類まれなるテロワールに感激し村に留まることを決めたのです。2016年にオグニャンが亡くなった後も、ボロヴィッツァの理念と使命に忠実に従い、彼等らしいワインを造り続けています。

 

故オグニャン・ツヴェタノフ氏(右)とアドリアナ・スレブリノヴァ氏(左) 故オグニャン・ツヴェタノフ氏(右)とアドリアナ・スレブリノヴァ氏(左)

「すべては自然が創るもの」土地の個性を素直に表現するワイン造り

オグニャンとアドリアナの仕事を一言で表すとするなら、それは「実験」です。アドリアナは「私たちの存在自体が実験でした。畑も持たず、醸造設備も無く、お金もそれほど所有していない私たち二人で、最初の一滴で人々を魅了し、最後の一滴を飲み終えた後も長く記憶に残るようなワインを造れるだろうか?という想いがありました」と振り返ります。この「実験」は成功し、彼らの取り組みが正しい道を辿ってきたことを証明しています。

 

畑では、農薬や除草剤を使用せず、認証は取っていませんがビオロジック農法でブドウを栽培します。人の介入は最低限に抑え、収量も最小限に留め、醸造時の亜硫酸添加も必要と判断した際に少量のみとしています。オグニャンとアドリアナは「人間は何も作り出すことはできない。維持し、継続し、発展させることはできても、創造することはできない。すべては自然が創るものだ」と考えており、それぞれの区画の異なる「声」を見つけ出し、その声をワインに素直に写し取ること、すなわち特別なテロワールをワインで表現することを信条としています。「個性的なワインを造ることは、ビジネスではなく哲学であり、生き方であると信じています」と生前オグニャンは語っていました。

ボロヴィッツァの美しい畑 ボロヴィッツァの美しい畑

赤い岩石がもたらす個性的なテロワール

ボロヴィッツァ村のあるブルガリア北西部は、国内でも最も不況な地域のひとつで、しばしば皮肉を込めて「Severozapadnal」、つまり「衰退した北部」と呼ばれることがあります。しかし二人は、この地域がワイン造りに適した良好な気候条件であることから、「Severozapazen」、直訳すれば「保護された北部」という、よりポジティブな名前で呼ぶことを好みます。またこの地が、しばしばブルガリア国外のワイン研究者を驚かせる、ユニークで、ワイン造りにとってはまさに宝石のようなテロワールであることを十分に理解しています。

 

地形は丘陵地帯で、近くには巨大な奇岩が数多く見られるベログラトチク村があります。この地域は大昔、海の底だったと言われており、その時代に海底に蓄積された砂が圧縮されて岩になり、酸化鉄によって赤く染まりました。その後海底が少しずつ上昇し、岩が浸食を繰り返した結果、不思議な形に削り取られた岩山が連なる、神秘的なベログラトチク岩が生まれたのです。ブルガリアでは観光地として知られています。

 

ベログラトチク周辺の土壌は岩そのものを思わせる、赤くて砂の多い小石で、優れたブドウ畑を作るには理想的な土壌となっています。気候も同様にブドウ栽培に適しており、日中は暖かくブドウがよく熟し、夕方にはドナウ川もしくはバルカン山脈から穏やかな涼しい風が吹きます。夜は気温が下がるため、ブドウの樹はゆっくりと休息することができ、この気温差が、醸造家が重視するバランスを生み出しているのです。

 

ベログラトチク村の赤い岩石 ベログラトチク村の赤い岩石

出来る限り人の手を加えないピュアなワイン造り

人的な介入をできる限り控え、亜硫酸の使用も最小限に抑えることで、産地の個性を最大限に表現するワインを生み出しています。職人的なワイナリーとして、ボロヴィッツァはテロワールの特徴をとらえ、表現力豊かなワインを限られた量しか造らないことを信条としています。

 

ワールド・アトラス・オブ・ワイン2008年版に掲載

10年前、ジャンシス・ロビンソンとヒュー・ジョンソンの調査チームがボロヴィッツァを訪れました。 2008年版のワールド・アトラス・オブ・ワインには9つのブルガリアワインが掲載されていますが、そのうちの2つがボロヴィツァのワインでした。