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マルベック(malbec)とはどんなワイン?アルゼンチンで有名なわけ。

マルベック(malbec)とはどんなワイン?アルゼンチンで有名なわけ。

フランス南部のカオール生まれのブドウが海をわたってアルゼンチンを代表するブドウ品種になったエピソードを、ブドウやできるワインの特徴を交えて解説。マルベック ワールド デーに「アサード」のような牛肉料理と一緒に乾杯するのもおすすめです。

「マルベック」とはどんなブドウ?

マルベックは、赤ワイン用のブドウ品種の一つです。もともとはフランスの南西地方に起源をもち、現在でも西南地方をはじめボルドー、ロワール地方で栽培されています。フランスでは別名(シノニム)でコーまたはコット(Cot)、また主力品種として扱っているカオール地区(西南地方)ではオーセロワ(Auxerrois)と呼ばれています。

18世紀にコットがボルドーに移植された際にマルベックと呼ばれるようになりました。1855年にはボルドーの栽培面積のうち6割を占めていましたが、病気や湿気に弱いため徐々に減っていき1956年の大雹害後わずか1,000ha未満に落ちました。ボルドーで補助的に使われるマイナーな扱いとなっているのはそのためです。現在のマルベック栽培面積はアルゼンチンが世界でダントツの一位で45,657ha(2020データ)です。

マルベックで造られるワインの特徴は

マルベックは小粒で果皮が厚く、タンニンが豊富な色合いの濃い、少しスパイシーな香りのするワインが特徴です。味わいはフルボディのものが多いですが、カベルネ・ソーヴィニヨンと比べると、よりフルーティになるのが大きな違いです。

『黒ワイン』とも呼ばれるマルベック

フランス西南地方のカオール地区ではマルベックを今でも主力品種として大切にしています。カオールは色調が濃く、赤を通り越して黒っぽいワインに仕上がることから「黒ワイン」の異名がつきました。『黒』と呼ぶにふさわしい力強い渋みとフルーティさが持ち味。西南地方の大ぶりな肉料理とよく合います。

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170年前にアルゼンチンに伝わる

現在マルベックはアルゼンチンが世界最大の産地であり、アルゼンチンを代表する品種にまで成長しています。特にメンドーサ州はこの品種の産地として世界で最も有名だといってもいいでしょう。

フランスから持ち込まれたマルベックは、1853年4月17日にアルゼンチンのメンドーサに植栽されました。
当初それほど注目されていませんでしたが、1980年代になって急速な拡大をみせました。

アルゼンチンがマルベックの一大産地に発展した理由

それには一人のイタリア人醸造家の存在がありました。彼の名前はアッティリオ・パーリ。本国イタリアではトスカーナ州で『サンジョヴェーゼ(キアンティの主要品種)の名人』として知られ、1980年代にメンドーサへ招待を受けました。目的はメンドーサにサンジョヴェーゼの栽培が適しているかを調査すること。綿密な調査の結果、彼はメンドーサにサンジョヴェーゼの可能性はほとんどないことを伝えます。そして、それまで注目されていなかったマルベックに「もともと植えられていたマルベックには大きな可能性がありそうだ」と可能性を付け加えました。

彼の発表がきっかけとなり、メンドーサではマルベックの注目が高まり、ついに『マルベック最高の地』としての名声へと繋がっていったのです。

マルベックがアルゼンチンに適している理由

アルゼンチンは乾燥した大陸性気候です。これはマルベックがこの地に適合する理由のひとつです。

チリとの国境を南北に走るアンデス山脈が湿った風をブロックし、農薬を控えてもブドウの病害の少ない環境。花ぶるい(受粉・結実の不良で多くが落果する現象)を起こしやすく、雹や霜が苦手で病気に弱いマルベックにとって、ここは理想の土地です。そして、世界で最も標高が高い場所にブドウ畑があることで知られているとおり、豊富な日照量と、昼夜の激しい寒暖差によって、熟したタンニンとしっかりとした酸が続くマルベックが生まれます。房と果粒が絞まっていてアロマが豊か。フランスの『カオール』とは違った魅力を楽しませてくれるのです。

醸造家を惹きつけたマルベック

調査のために何度かアルゼンチンを訪れたアッティリオ・パーリ自身もそのうちにメンドーサでワイン造りに参加するようになりました。

今ではメンドーサの『アルトス・ラス・オルミガス』に参画している彼は、同様にイタリアでポッジョトンドなどの著名ワインを造るワインメーカーであるアルベルト・アントニーニなどと共に、メンドーサでしか表現できないマルベックの可能性を追求しています。

ワイナリー情報:アルトス・ラス・オルミガス

マルベックに合う料理『アサード』

さて、アルゼンチンと聞いて連想するのはサッカー?アルゼンチンタンゴでしょうか?それとも牛肉?
アルゼンチンは世界有数の牛肉大国。個人消費量は世界でもトップクラスです。マルベックに合う食材として牛肉が真っ先に挙がるのも頷けます。

自然の牧草を食べてのびのびと育つ放牧が中心のアルゼンチンビーフは、余分な脂肪がなく、赤身肉の旨みが際立ちます。アサードという名物料理が有名で、その中でも最も特徴的な料理は牛肉を丸々一頭、岩塩だけで味付けして炭火でじっくり焼き上げるという、いわば、アルゼンチンスタイルのバーベキューです。

炭火の香ばしい風味をまとった、分厚い良質の赤身肉とくれば、タンニンが豊富で程良い酸味もある赤ワインを合わせたくなります。まさにそれは、力強い果実味がたっぷりで、早いうちから充分に楽しめる完熟したタンニンのアルゼンチン産マルベックワイン。ひとたび合わせれば、料理とワインが互いを引き立て合い、そのおいしさも倍増する揺るぎない組み合わせ。

マルベックとアサードが合う背景

アサードとマルベックのペアリングに思いを巡らせてみると、イタリア・フィレンツェの名物料理、ビステッカ・アラ・フィオレンティーナとサンジョヴェーゼのワインが重なります。フィレンツェではキアナ牛というTボーンを一か月熟成させた後、大きな塊のまま焼いて、オリーブオイル、塩、胡椒でシンプルに味わう料理に、ネッビオーロで造られるキアンティやブルネッロ・ディ・モンタルチーノといった赤ワインを合わせるのが定番。ワインの酸、タンニン、アルコール分がビステッカのボリュームと脂質を和らげる理想的なペアリングが成り立ちます。

アルゼンチンは、他のラテンアメリカ諸国に比べて先住民の比率がとても低く、人口の約80%がイタリア、スペイン系の人々の国なのだとか。筆者がそれを知ったとき、アルゼンチンのアサードにイタリアのネッビオーロ、イタリアのビステッカにアルゼンチンのマルベックワインを合わせたくなったことが不思議ではなかったと、妙に納得させられました。

4月17日は「マルベック ワールド デー」

1853年4月17日、アルゼンチンでは、農学研究所と農学学校の創設を求める法案が州議会に提出され、この日をワイン産業の発展を祝う日として定めました。4月17日はメンドーサにはじめてマルベックが植栽された日。2011年に始まったこの記念日は世界中に広がっています。

アルゼンチンのアサードはなかなか気軽にはできませんが、キャンプやバーベキューなどでも、またご自宅でステーキなどとのお供にも。野外だけでなく、4月のマルベック・デーにもアルゼンチンのマルベックを楽しんでみてはいかがでしょうか?

おすすめのマルベックワイン

アルトス・ラス・オルミガス(アルゼンチン/メンドーサ)

アッティリオ・パーリが参加。究極のマルベックを生み出すべく結集した、イタリアワイン界の巨匠達によるコラボレーションブランド。エレガントスタイルの現代版マルベックを生み出しています。

ウコ・ヴァレーの南西端、標高1,200mの涼しく風の強いエリアのブドウを使用。
素晴らしいフィネスと持続性、緊張感と軽さをあわせもつ。

標高1,100~1,600mに位置するグアルタジャリーのブドウを使用。
美しい酸、繊細なハーブの香りと赤い果実や肉の香りが調和。強靭なタンニンが力強い骨格を形成する。

アンデンス山脈の麓に位置するウコ・ヴァレーのブドウを使用。
大きな寒暖差、強い日差しの影響で熟したフルーツとペッパーの香り、華やかで甘いニュアンスと引き締まりのある味わい。

どのようなワイナリーか、このワインを飲めばわかる1本。
フレッシュで酸味があり樽の香りがない、メンドーサの本当のテロワールを表現。

飲みやすく、アプローチしやすいスタイル。
メンドーサ各地のブドウを天然酵母で発酵。

ボデガス・カリア(アルゼンチン/サン・ファン)

アルゼンチン第二の栽培面積を誇る、サン・ファンに2003年に登場したワイナリー。
ジューシーな果実味と完熟したタンニン。テロワールを表現した良質なマルベックを低価格で楽しませてくれます。

ボデガ ナバロ・コレアス(アルゼンチン・メンドーサ)

アルゼンチンを代表するスパークリングワインの造り手。

マルベック100%のハイセンスなロゼ・スパークリングワインで、泡とアロマが優美に花開きます。

アルパマンタ エステイト ワインズ

アルゼンチンではじめてビオディナミ農法の認証をとった、自然派ワイナリー。

奥行きのあるボディと円熟感が美しい。

ル・セドル・ディフュジョン(フランス/カオール)

マルベックの天才と世界的に評価の高い醸造家パスカル・フェラージュを擁するワイナリー。

滑らかで驚くほどジューシーなモダン・カオールを表現。

ワイナリーの上級キュヴェ。リッチで力強い完熟した果実味。

シャトー・ペイボノム・レ・トゥール(フランス/ボルドー)

ボルドーで補助品種として使われることのあるマルベックを一部使用。

収量を制限することで、まろやかなボディを持つ銘酒。

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