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ワインと暮らす

グレッチェン・パーラトのロゼな世界~ワインと音楽~

グレッチェン・パーラトのロゼな世界~ワインと音楽~

ワインと音楽を合わせて楽しむコラム。味と音に共通する「軽さ」で、舌にも耳にも心地よい組み合わせを。筆者はジャズシンガーの東海林美乃梨

長いこと「ワイン好き」をやっていると、よく聞かれる質問が「好きなワインは何?」である。この問いに即答するのはなかなか難しい。
なぜなら、“好きではないワイン”がないから!それにワインのチョイスはいつも、共にする食事や人、シチュエーションや体調などによって決まり、その時々によって、欲するワインが変わる。
しかし、最近私が「強いていうならば…」と前置きをして答えるのが、「ロゼワイン」。

ロゼワインといえば、華やかで可愛らしいピンク色が魅力的なワインである。甘口を思い浮かべる方も多いかもしれないが、主流は辛口。主に黒ブドウから造られるが、ロゼシャンパーニュのように黒ブドウと白ブドウのブレンドという造り方をするものもある。

私がなぜロゼワインを好きなのか。
それは、どんな食事にも、どんな気分の時にも合わせやすいからである。
例えばカジュアルな飲食店、ビストロや居酒屋に行って、魚料理も肉料理も野菜料理も注文する時。白ワインを頼むか赤ワインを頼むか迷うことはないだろうか。もちろん、「2種類とも」という方もいらっしゃるかもしれないが、ボトルを1本頼むなら、私はロゼを選ぶ。
また、自宅の冷蔵庫に残っている食材で食事の準備をする時。(ワイン好きといっても毎日毎日その日のワインと食事のペアリングを考えた食材を用意できる訳ではないのが現実である…。)
ロゼワインがあれば、和洋折衷、創作料理にも違和感なく合わせられる。
そして、「お腹は空いていないけどワインをちょっと飲みたいな」という時。ロゼワインは実に丁度良い加減で私の心を満たしてくれるのだ。
そう、ロゼワインは赤ワインと白ワインの“良いとこどり”。私はそう思っている。

そんな、大好きなロゼワインには、どんな音楽をあわせるのか…。
それは、ボサノヴァなどのブラジル音楽。
私がワインと音楽を合わせる時のひとつの考え方として、ワインの重さと音楽の重さ(=調やテンポ)を合わせるという方法があるのだが、赤ワインと白ワインの中間的存在であるロゼワインと、ボサノヴァの速すぎず遅すぎず、暗すぎず明るすぎない心地の良いテンポや音階が、とてもマッチするのである。 そう、白人や黒人、黄色人と様々な民族文化が影響し出来上がったブラジルの音楽が、あらゆるジャンルの音楽の“良いとこどり”であるということかもしれない。

ブラジル音楽といえば、アントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・ジルベルトなどの巨匠たちが浮かんでくるが、“ジャズ畑”にいる私がオススメしたいのは、現代ジャズ・シーンで注目を集めている「グレッチェン・パーラト」である。彼女は、アメリカのカリフォルニア出身のシンガーで、新人ジャズ・ヴォーカリストを数多く輩出している「セロニアス・モンク・インターナショナル・ジャズ・コンペティション」の2004年ヴォーカル部門で優勝後、一躍注目を集め、現代ジャズ・シーンを語るには欠かせない存在となった。
彼女はジャズというジャンルはもちろんのこと、ブラジル音楽にも造詣が深く、2021年にリリースされたアルバム「Flor」はその要素が沢山詰まった一枚となっている。

「Flor」とは、ポルトガル語で「花」という意味であり、ジャケットには美しい花々が描かれている。
このアルバムを耳にし、ジャケットを目にした時、思い浮かべたワインがある。南フランスのドメーヌ・ポール・マスが造っているロゼワイン「ル・ロゼ」だ。

数々の輝かしい賞を受賞し高評価を得ている造り手ドメーヌ・ポール・マスは、2020年には欧州一の称号であるヨーロピアン・ワイナリー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、名実ともに世界のトップクラス入りを果たしたワイナリーである。
そんなポール・マスがリリースした「ル・ロゼ」は、ボトル一面に華やかな花々が描かれ、フレッシュで余韻の長い果実味が魅力のロゼワインだ。

一方、アルバム「Flor 」は、1曲目のジョアン・ジルベルトの名演で有名な「É Preciso Perdoar (= 許してあげよう)」のカバーから始まり彼女のオリジナル曲を含むアルバム全体が、ボサノヴァやサンバなどのブラジル音楽を、彼女なりに表現されたものに仕上がっている。重すぎず軽すぎず、どんな気分の時にもマッチする、まるでロゼワインのような一枚なのだ。
「ル・ロゼ」と「Flor」。暖かく、心地よく、華やかなこの組み合わせは、幸せな時間を与えてくれる魔法のように私は感じる。

ワインと音楽で、人の心に幸せを届けたい。そんな私の想いを表すのにふさわしいこの組み合わせは、贈り物にも最適だ。 友人や家族の今度の誕生日には、「ル・ロゼ」と「Flor」を贈ってみようかな…!

参考サイト:グレッチェン・パーラト/CORE PORT/2022年3月28日閲覧

ぺアリング推奨アルバム

グレッチェン・パーラト「Flor」

ご紹介したワイン・生産者

フランス
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Domaines Paul Mas

ドメーヌ・ポール・マス

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