COLUMU コラム 『イタリアワインの賢人、サン・マルツァーノを語る!』

イタリアワインの賢人、サン・マルツァーノを語る!

第1回 イタリアワインコンサルタント 林 茂 氏 『ヴィンドーロ』

イタリアワインの賢人 林茂氏

サン・マルツァーノ この一本 『ヴィンドーロ』

ヴィンドーロ
連載第一回目にお送りするこの『ヴィンドーロ』は大変面白い。
プーリア州・サレント地方の赤ですが、例えばこのエリアで一番よく知られるサリーチェ・サレンティーノという銘柄は、ネグロ・アマーロ種主体にマルヴァジーア・ネーラ種やアレアティコ種をブレンドし、味わいのバランスをとります。
しかしこの『ヴィンドーロ』はネグロ・アマーロ種100%とユニークで興味深いですね。とにかく濃い。
ベリー系の様々な果実、際立って感じるのはブルーベリー、カシス、熟したプラム…スパイスのニュアンスもあります。
そして豊富な果実味と旨味もありますね。ボトルもすごく重たくて存在感があります。これは料理がなくても充分楽しめるワインです。
供出温度は低めがお勧めです。

プーリア州というワイン産地

林氏
シチリアと並びプーリアは、莫大なワイン生産量を誇る、元々はバルクワイン(ブレンド用ワイン)の産地。
その最たるものが、シチリアで言えば、ネロ・ダーヴォラ種から造られるワイン、プーリアで言えばネグロ・アマーロ種で造られる赤ワイン。大量に生産でき、色が濃く、味わいも濃厚で、アルコール度数も高い。北イタリアやフランスでは、その酒質を補完するブレンド用ワインとして珍重されていました。
第二次世界大戦以前は、大半は生産協同組合でワインは生産されてきましたが、大戦後、小さな規模で品質重視のワイナリーが多く出現し始めました。
現在では、量の産地から質の産地へ変貌を遂げつつある注目の産地といえます。

サン・マルツァーノの本拠地、注目の産地ターラント

これはあまり知られていないことですが、ターラントは、ワインとともに鉄鋼の一大産地でもあります。過去には新日鉄も進出し、 イタリアの鉄鋼会社と合弁会社を興したことがあります。ですから日本人も何十人も住んでいて、私の友人は教師をしていました。

ターラントはブドウが健康的によく熟れるのが特徴で、ワインにする前の、熟したブドウは既に食べても甘くて美味しいのです。
標高の高い丘陵地状のところから、低い平地まで多彩な地形。風通しが大変よく、畑は健全な状態に保たれるのでビオに取り組む生産者も多いです。

特有の石灰質土壌を持つ土地は、地下の凝灰岩が川からの水で溶け、空洞になった空間が多く点在します(世界遺産・マテーラの洞窟と同じ原理)。これが独特のミネラルをワインに感じる所以です。
港は、湧き水や川からもたらされた淡水が海に流れ込み、海水と交じり合う。きれいでよどみのない水であり、ムール貝の養殖が有名。元々は、ギリシャを臨む、地中海航路の要所。戦略上においても重要な港です。典型的な美しい入り江であり、現在でもイタリア海軍の基地があります。そして、海軍総司令官はターラント在住です。食文化は多彩で、野菜、魚などは豊富、内陸から届く山のものも食す。まさにプーリアは食材の宝庫といえます。

サン・マルツァーノのワインについて

サン・マルツァーノのワインのサンプルをひとしきり試してみました。第一に同社のワインについて感じたのは、しっかりと『計算されて造られた』印象。
例えば、エントリーレべルのソーヴィニヨンを使った白、イル・プーモの品質の高さには感心しました。緩さがなくしっかりと造られている…。
第二に、プーリア『らしさ』がよく表現されている点。ボルゲリとも違いますし、ピエモンテとも違う。南イタリア、プーリアならでは、この土地ならでは、のワイン達です。
林氏

今回お話しを伺った賢人 林氏

林 茂

林 茂(はやし しげる)氏

1954年静岡生まれ。大手酒類会社入社後、イタリア駐在員として13年研鑽を積み、日本人として初めて イタリアソムリエ協会(AIS)認定ソムリエ資格を取得。
トリノに本社を置くイータリージャパン代表取締役社長を歴任し、現在、コンサルティング会社SOLOITALIA代表取締役。
2016年にトリュフとワインのアルバ名誉騎士団に選出される。
最新の著書は、『国家が破綻しても人生は楽しい?』(万来舎刊)、 『イタリアワインの教科書』(イカロス出版)がある。

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