1. Home
  2. Column
  3. シェリー酒とはどんなお酒? 辛口から極甘口まであるシェリーの世界
ワインと暮らす

シェリー酒とはどんなお酒? 辛口から極甘口まであるシェリーの世界

シェリー酒とはどんなお酒? 辛口から極甘口まであるシェリーの世界

シェリー(シェリー酒)はスペイン産ワインの一種です。独特の製法で造られており、辛口から極甘口まで幅広い味わいがあります。産地や種類、造り方をはじめ、地元で人気の飲み方(カクテルアレンジ)や、料理との合わせ方情報も。シェリーの魅力についてお伝えいたします。

シェリー酒とは?

『シェリー酒』はスペインのアンダルシア地方の特産ワインです。
造る工程でアルコール添加を行う『酒精強化ワイン』で、白ワインに分類されます。
一般的なワインに比べて高めのアルコール度数、特別な熟成方法によって生まれるブラウンの色あい、ナッツのような複雑な風味を伴います。ポルトガルの『ポートワイン』、イタリア・シチーリア島の『マデイラ酒』と並んで、世界三大酒精強化ワインと呼ばれます。
日本では「シェリー酒」と呼ばれることがありますが、本当は単独で『シェリー』というのが正しい呼び方です。

シェリーの産地

アンダルシア地方にある「ヘレス・デ・ラ・フロンテラ」、「サンルカール・デ・バラメーダ」、「エル・プエルト・デ・サンタ・マリア」の3つの街を中心に限られた地域で造られます。三つの街を結ぶと三角形になるので、通称シェリー・トライアングルと呼ばれています。
原産地呼称制度上の正式名称は、ヘレス・ケレス・シェリー(Jerez-Xerez-Sherry)となり、スペイン語、フランス語、英語の順でヘレスを意味する地名が並べられています。
アンダルシア地方は日照時間が長く、まさに「太陽の国」スペインを表すような土地。降水量が少ないこの地で、ブドウの生育を可能にしているのが「アルバリサ」土壌です。石灰質を多く含む真っ白なこの土壌は保水性が高く、雨季に水分を蓄え、乾季にブドウの根から水分を与えることができるのです。

シェリーの意味

紀元前にフェラキア人が「ヘレス・デ・ラ・フロンテラ」に定住し、「ヘラ(Xera)」と称していたのが始まり。
中世になりアラブ人がこの地を「シェリシュ(Sherish)」と称し、イギリスへ輸出されるようになるとシェリシュから転訛し、英語のシェリー(Sherry)が定着しました。

シェリーのブドウ品種

「パロミノ」、「ペドロ・ヒメネス」、「モスカテル」の3種類の白ブドウが認められていますが、栽培比率の95%以上がパロミノ種です。
ペドロ・ヒメネスとモスカテルは発酵を途中で止めるので大変甘いワインになります。


シェリーのつくり方とソレラ・システムとは?

ブドウの収穫、圧搾、発酵までは白ワインと同じ醸造工程を進みますが、樽に詰める時に、わざと空気の層を残すのがワインとの大きな違いです。

フィノタイプのシェリーは、パロミノ種を使って完全発酵させた辛口のシェリーです。
産膜酵母が生育しやすいように、ベースワインを15度に酒精強化します。熟成期間中、この産膜酵母がワインを酸化から守り、同時に、独特の風味を与えます。この工程を生物学的熟成と呼びます。

酒精強化でアルコール度を17度以上に上げると産膜酵母は生育できない環境になり消えていきます。つまり、ワインは常に酸素に触れることになり、酸化熟成が起こります。色合いは琥珀色からマホガニー色へと変化し、ナッツのニュアンスを伴う深い香りが現れたフルボディのワインになります。こちらがオロロソタイプで、オロロソはスペイン語で匂い、風味を意味するオロールに由来します。

シェリーの製法と言えば「ソレラ・システム」。正式には、「ソレラ・イ・クリアデラ・システム」と言います。
「criadera(クリアデラ)」は育てるという意味に由来するそうで、クリアドレス(育てる人)というテイスターが毎日入念に樽ごとにテイスティングを繰り返し、どの樽をどのシェリーにするのか、まさに育てるように生産者が表現したいシェリーに近づけていく、非常に高度でミステリアスなシステムです。

熟成庫はボデガと呼ばれ、フロールが好む温度と湿度を保つための工夫がされています。

強い日差しを遮断するため50センチ以上の分厚い外壁に守られたボデガには、樽が3~4段の列を成して積み上げられています。最下段の樽は「ソレラ」と呼ばれ、最も年数の古いワインが入っています。直ぐ上の段の樽を「第1クリアデラ」、下から3段目の樽を「第2クリアデラ」と呼び、段が上がるごとに少しずつ若いワインが入った樽が組み上がっています。


出荷される際は一番下のソレラから適量を抜き取り、同量を上段の樽から抜いて古い樽に補充します。
常に継ぎ足しを繰り返しながら、何年もかかって古いワインと若いワインが混ざり合いながら、古いワインの個性を若いワインが受け継いでいく。シェリーは、収穫年の天候などには左右されず、好みの味のシェリーが見つかれば、いつでもその求める味を楽しむことができるのです!


シェリーの主なタイプ

ブドウ品種による違いに加え、発酵の工程までは同じワインだったものが、熟成方法の違いによって味わいや香りが驚くほど多様に変化するシェリー。こちらでは、基本のタイプを3つご紹介します。

①フィノ

アルコール度数は15%以上。フロールの膜の下で熟成するため、フロールの香りがつくタイプです。 色が淡く、スッキリ軽い辛口タイプ。生ハムや軽めのオードブルをつまみながら飲むのに最高で、食前酒として冷やしてストレートで楽しむのもよし、炭酸水で割ってカクテルにしてもよし。軽やかに、カジュアルに楽しめます。

②オロロソ

アルコール度数は17度以上。琥珀色からマホガニー色の色調です。酸化熟成によって豊かな香りと深いコクを持たせた辛口タイプ。合わせる料理の幅が広がり、肉料理や煮込み料理、熟成が進んだチーズとともに。

③ペドロ・ヒメネス

ペドロ・ヒメネス種というブドウを干しブドウ状にしたものから造られる、マホガニー色の極甘口タイプ。口に含むと、とても滑らかに極上の甘みが広がります。

季節に合わせたシェリーの飲み方

ワインにとっては合わせることが難しい食材も受け止める料理との相性が良いシェリー。特に、魚介類との相性は抜群で、調理法を問わないほど!

四季のある日本では、気温や天候に引っ張られ、食べたくなるもの、飲みたくなるものが変わるので、先ほどご紹介した3つのタイプのシェリーを季節に合わせて楽しむのはいかがでしょう。

暑い時期にぴったり!フィノの飲み方


まずはフィノ!辛口のフィノシェリーをスプライトなどの炭酸入り清涼飲料水で割るカクテルは「レブヒート」と呼ばれ、アンダルシア地方ではお祭りで飲まれるカクテルだそう。

氷を入れたグラスに軽めの辛口のシェリーを注ぎ、炭酸水で割れば、シュワっと心地よい発泡感が気持ちいいカクテルに。その時の気分でレモンやミントの葉をいれれば爽やかさも増します。
淡く黄金色の色合いが、炭酸の泡立ちとともに美しく輝き、夏の夕暮れに飲めば、体から熱をスッと奪って、軽やかな味わいがしみ込んでいきます。
ジメっとした日本の夏におすすめの飲み方です。

お料理は魚介類や塩気のあるものがおすすめ。ソーダ割ならフリットなど、揚げ物のメニューにぴったりです。

関連記事「夏の"家飲み"で活躍するワインとお酒♪」

秋の気配を感じたら。オロロソの飲み方


徐々に気温が下がって過ごしやすくなって、秋の気配を感じるとともに、コクのある料理を求めるようになったらオロロソを。華やかな香りを楽しむならストレートで。フィノ同様、炭酸水で割ってもおいしいです。
お料理はローストした赤身肉やジビエとの相性は抜群!和食だとタレや味噌を使った味にも合います。

寒い時期には甘さを楽しんで。ペドロ・ヒメネスの飲み方


そして、ゆったりと食事を楽しむ冬、食後にペドロ・ヒメネスのとろけるような甘美にじっくり浸る。。。こちらは迷わずストレートで味わっていただきたいです。
バニラアイスクリームにとろりとかけて味わうもよし、スペイン産の羊乳をつかったチーズに合わせるのもおすすめです。

3つのタイプのシェリーではありませんが、生牡蠣がお好きなら、酸化熟成タイプのアモンティリャードと合わせて、ペアリングの妙を楽しんでいただきたい。

お好きなスタイル、お好きな料理と合わせて、個性豊かなシェリーの世界をお愉しみください。

高いところからシェリーを注ぐ!?ベネンシアドールとは

細長い道具を使って、頭上を越える高さからグラスに向かってお酒を注ぐ。
そんな光景をバーやレストランで見たことはないでしょうか?

この技を繰り出すのが「ベネンシアドール」。

細長い柄杓のことを「ベネンシア」と呼び、グラスから1mほど高い位置からシェリーを注ぎます。グラスに到達するまでにシェリーが多くの空気と触れ、より香りが高くなります。

料理にも使われるシェリー

調理の最後にアルコール度数の高い酒をフライパンや鉄板の中に落とし、一気にアルコール分を飛ばす調理法「フランベ」。
この時にシェリーも使用されます。
魚介類やデザートの風味付けにおすすめです。

おすすめのシェリーをご紹介いたします

シェリー コロシア フィノ


ボデガ・グティエレス・コロシアは、エル・プエルト・デ・サンタ・マリアを流れるグアダレーテ川の河口に面したただ一つのボデガ。河口からの湿気がシェリーには欠かせない「フロール」の形成に最高の環境を作っています。フレッシュな辛口タイプで、僅かに感じる塩味が食欲をそそります。

シェリー コロシア オロロソ


フィノと同じ生産者が造るオロロソ。酸化熟成をさせた辛口タイプで、コクのある料理とのペアリングも楽しめます。

シェリー ペドロ・ヒメネス ソレラ 1918


1919年設立、100%ペドロ・ヒメネス種で極甘口の生産に特化した非常に珍しい(アンダルシア地方ではここだけ)ボデガ。濃縮した果実のフレーバーが、「これでもか」と複雑に重なり合い、べたつきが全くない上品な甘さ。

一覧に戻る